ジエチルエーテルの性状
ジエチルエーテルは、2つのエチル基が酸素原子でつながった構造(エーテル結合)をもつ有機化合物で、第4類の特殊引火物に該当します。単に「エーテル」とも呼ばれます。引火点が−45 ℃、沸点が約35 ℃と低いため、常温で多量の可燃性蒸気を発生します。また、日光や空気に長く触れると、爆発性の過酸化物を生じます。
性状
ジエチルエーテルの構造と過酸化物の生成 C₂H₅エチル基−O−エーテル結合C₂H₅エチル基 日光・空気(酸素)長く触れる 過酸化物が生じる爆発性 加熱・衝撃・摩擦爆発のおそれ| 品名 | 特殊引火物(非水溶性) |
|---|---|
| 指定数量 | 50 L |
| 化学式 | C₂H₅OC₂H₅(エーテル結合 −O− をもつ) |
| 外観 | 無色透明の液体で、特有の甘い刺激臭がある |
| 引火点 | −45 ℃ |
| 発火点 | 約160 ℃ |
| 沸点 | 約35 ℃(非常に揮発しやすい) |
| 液比重 | 0.71(水より軽い) |
| 蒸気比重 | 約2.6(空気より重い) |
| 燃焼範囲 | 約1.9〜36 vol%(広い) |
| 溶解性 | 水にわずかに溶ける。アルコールにはよく溶け、油脂などをよく溶かす |
| その他 | 蒸気に麻酔性がある。電気の不良導体で、静電気が発生しやすい。日光や空気に長く触れると爆発性の過酸化物を生じる |
燃焼範囲
ジエチルエーテルの燃焼範囲は約1.9〜36 vol%で、ガソリンよりはるかに広くなっています。下限値も約1.9 vol%と低いため、わずかな蒸気でも燃焼範囲に入ります。参考としてガソリンも並べています。
ジエチルエーテル 1.9〜36
二硫化炭素 1.3〜50
アセトアルデヒド 4.0〜60
酸化プロピレン 2.3〜36
ガソリン 1.4〜7.6
特殊引火物の比較
特殊引火物は、1気圧において発火点が100 ℃以下のもの、または引火点が−20 ℃以下で沸点が40 ℃以下のものです。指定数量はいずれも50 Lです。
表は横にスクロールして確認できます。
| 物質 | 水への溶解 | 引火点 | 沸点 | 発火点 | 燃焼範囲(vol%) | 液比重 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ジエチルエーテル | わずかに溶ける | −45 ℃ | 約35 ℃ | 約160 ℃ | 1.9〜36 | 0.71 |
| 二硫化炭素 | 溶けない | −30 ℃以下 | 約46 ℃ | 約90 ℃ | 1.3〜50 | 1.26 |
| アセトアルデヒド | 溶ける | −38 ℃ | 約21 ℃ | 約175 ℃ | 4.0〜60 | 0.78 |
| 酸化プロピレン | 溶ける | −37 ℃ | 約35 ℃ | 約449 ℃ | 2.3〜36 | 0.83 |
- 発火点は、二硫化炭素(約90 ℃)に次いでジエチルエーテル(約160 ℃)が低い値です。
- 燃焼範囲の下限値は、二硫化炭素(1.3 vol%)に次いでジエチルエーテル(1.9 vol%)が低い値です。
- ジエチルエーテルと二硫化炭素は水にほとんど溶けませんが、二硫化炭素は水より重く、ジエチルエーテルは水より軽い液体です。
危険性
第4類に共通する危険性は、第4類に共通する火災予防・消火方法で確認できます。ここではジエチルエーテルに特有の危険性をまとめています。
- 引火点が−45 ℃と非常に低く、沸点も約35 ℃と低いため、常温で激しく気化し、引火の危険が非常に大きい。
- 日光に当たったり空気に長く触れたりすると、爆発性の過酸化物を生じる。過酸化物は加熱・衝撃・摩擦で爆発するおそれがあり、液体が蒸発すると過酸化物が濃縮され、爆発の危険が高まる。
- 発火点が約160 ℃と低く、高温の物体に触れただけで発火するおそれがある。
- 電気の不良導体で、流動やかくはんによって静電気が発生・蓄積しやすい。
- 蒸気には麻酔性があり、吸い込むと意識を失うおそれがある。
火災予防
第4類に共通する火災予防は、第4類に共通する火災予防・消火方法で確認できます。ここではジエチルエーテルに特有の注意点をまとめています。
- 直射日光を避け、冷暗所に貯蔵する。
- 容器は密栓し、空気との接触を少なくして過酸化物の生成を防ぐ。
- 長期間保管したものは、過酸化物が生じていないか注意する。
- 火気だけでなく、加熱された設備などの高温の物体も近づけない。
- 容器や設備を接地し、静電気の発生と蓄積を防ぐ。
消火方法
二酸化炭素、粉末、泡などで空気を遮断する窒息消火が有効です。ジエチルエーテルは水より軽く水にほとんど溶けないため、棒状の水をかけると燃えている液体が水面に浮いて広がります。消火方法の基本は、第4類に共通する火災予防・消火方法で確認できます。